局所排気装置
有害な化学物質(有機溶剤)、粉じん、健康を害する物質を排気する
有害な化学物質(有機溶剤)や粉じんなど健康を害する物質を局所排気フードから吸込み、ダクトによって搬送し、専用の送風機により工場外部に排気する換気装置を局所排気装置といいます。
局所排気装置は空気取り入れ口のフード、空気清浄装置、ファン(排風機)、排気ダクト及び排気口などから構成されています。
フードは発生源を囲むか発生源に近い位置に設置し有害物質を含有する空気をダクトに流入させるための吸引口で、作業場の形態などによりさまざまな形状がありその形状から囲い式や外付け式などと呼ばれています。
ダクトはフードから流入した有害物質を含む空気を排気口に向かって搬送する管で、フードからファンまでの吸引ダクト及びファンから排気口までの排気ダクトがあります。
空気清浄装置は有害物質を含有する空気を外気に排出する前に清浄化する装置で、粉じんを除去するための除じん装置、ガス・蒸気を除去するための空気清浄装置があります。
ファンはフードから流入した空気をダクトや空気清浄装置を通して排気口から大気中に排出するために必要なエネルギーを作る装置です。
局所排気を効果的に行うために
局所排気を効果的に行うためには発生源の形、大きさ、作業の状況に適合した形と大きさのフードを使うことが重要です。
局所排気装置の良し悪しは排気フードの設計次第と言っても過言ではありません。
①できるだけ有害物の発生源の近くで、
②有害物の特性を考慮して(有機溶剤は空気より重い、など)
排気フードを設計する必要があります。
フードの設計において最も重要な点は『いかに吸込み口(捕捉面)を小さくするか』『いかに発生源の近くに設置するか』です。
捕捉面が小さくなれば吸込み風量を落とすことができ、また発生源に近ければ近いほど少ない風量で十分な量の排気を行うことができるため必要な空調機の能力を小さく抑えることができます。
田崎設備ではこの『いかに吸込み口(捕捉面)を小さくするか』という点に強いこだわりを持って取り組んでいます。
作業環境や扱う材料、有機溶剤の種類、日々のオペレーションや作業工程、作業員の動線などの聞き取りを行い、吸込み口を小さくするために作業を行う人数を減らせないか、工程の順番を変えられないか等をお客様と話し合いながらご要望に合わせた設計・提案をさせていただいております。
なぜそこまで吸込み口の大きさにこだわるかのかと言うと、コストダウンに繋がるからです。
通常の局所排気装置は必要以上の風量で排気することが多く、空調機もオーバースペックになりがちです。
その分イニシャルコストがかかり費用が高価になってしまうのが弊社にとって悩みの種でした。
どうすればコストを抑えることができるかを追求した結果、吸込み口を小さくし風量を必要最低限にすることでコストダウンを実現する事が出来ました。
時には局所排気フードだけ弊社で製作し、お客様自身にビニールのシートなどを取り付けてもらうことで吸い込み口を小さくしていただくこともあります。
作業環境の改善でもっとも大切なポイントは、お客様の要望をお聞きしながらご提案し、改善方法を探ることです。
発生源に近く設置すればするほどお客様の日々のオペレーションの邪魔になるという矛盾とどう向き合うか、その解決にはお客様との打ち合わせが不可欠であり、共に妥協点を探すプロセスが重要です。
もちろん、局所排気装置だけ取り付ければ作業環境が良くなるわけではありません。
局所排気装置で工場内の空気を排出した分、外気を取り込む必要があります。これを給気と呼びます。
給気が不十分な状態で工場内の空気が足りなくなってくると陰圧と呼ばれる状態になります。
陰圧とは外よりも室内の気圧が低い状態になる事です。水が高い所から低い所へ流れるように空気も気圧が高い方から低い方へ流れようとするので、窓のサッシやドアの隙間などから外気が入り込んできます。
その際に虫やホコリなどの異物が紛れ込んだり、近年の気密性が高い建物の場合は外開きのドアに気圧がかかって重くなるなど不具合が生じます。
また梅雨の時期であれば湿度の高い外気が入り込むことで結露が生じ、やがてはカビが発生するなど生産環境に大きな被害をもたらす事態になりかねません。
この状態を解消するには外気を取り入れる必要があり、給気設備の設置が欠かせません。
給排気のバランスや空気の流れをコントロールできる設備が揃って初めて快適な生産環境であると言えるでしょう。
田崎設備では局所排気装置によって排気される空気の量と給気すべき必要な空気の量を計算し、適切な能力の外気導入エアコンも併せてご提案させていただいております。
既存設備をできるだけ利用したい、コストを抑えたい、などの希望があるお客様には
①設置場所の図面(平面図、断面図、設備図)
②既存排気装置の仕様
などのデータをいただけるようお願いしています。
排気場所や給気の流れ、既存空調への影響などを考慮することではじめて使い勝手のよい排気装置の設計につながります。
局所排気装置の種類
囲い式フード
囲い式フードは発生源を囲い、開口面に吸い込み気流を与えることによって有害物質がフード外へ流出することを防ぐことができるため化学物質へのばく露を減らすことができます。
囲い式フードは外付け式フードと比べて外乱気流による影響を受けにくく、小さい排風量でよい効果を得られる最も効果的なフードです。
プッシュプル型換気装置
局所排気装置と並ぶ環境改善装置にプッシュプル型換気装置があります。
局所排気装置に比べて一般に低い風速で有害物質を補足して排出することができ、塗装作業や溶接作業、グラビア印刷など有毒性の強い溶剤を使う場合に適しています。
プッシュプル型換気装置とは有害物質を生み出す作業場を挟んで吹き出し用のフードと吸い込み用のフードを向かい合わせにして設置する方法です。
一定方向の流れを作り出すことで有害物質が作業場に拡散することを防ぎます。
空気を送り込む側が吹出し側フード(プッシュフード)、吸い込む側が吸込み側フード(プルフード)と呼ばれ、名称の由来となっています。
プッシュプル型換気装置は局所排気装置に比べて低い風速で有害物質を補足し排出する事ができるため、塗装作業や溶接作業、グラビア印刷などに用いられています。
田崎設備の施工事例
<吹出し側フード(プッシュフード)>
<吸込み側フード(プルフード)>
<全体図>
<概略図>
吸い込むだけの局所排気装置に比べて安全面や安定した気流を維持できるなど優れた面も多く、作業従事者は安定した空気の流れを知ることにより有毒ガスや蒸気、粉じんに触れることなく安心して作業することができます。
ただし、フード以外にも送風機や排気ダクトも必要になるため換気装置が大掛かりになりコストがかかるというデメリットがあります。
<プッシュ側送風機>
なお、汚染された作業場に新鮮な空気を入れ、汚染濃度を低くしてそのまま外部に放出する方式を全体換気といいます。
全体換気は希釈換気とも呼ばれ、給気口から入ったきれいな空気は発散源付近の汚染された空気と混合希釈を繰り返しながら換気扇に吸引廃棄され、その結果有害物質の濃度を下げることができます。
リスクアセスメントの結果、リスクが大きい場合には局所排気装置やプッシュプル型換気装置の導入が望ましいです。
外付け式フード
外付け式フードは開口面の外にある発生源の周囲に吸い込み気流を作ってまわりの空気と一緒に有害物質を吸引するもので、まわりの空気を一緒に吸引するため排風量を大きくしないと十分な能力が得られないという注意点があります。
また、まわりの乱れ気流の影響を受けやすく囲い式フードに比べて効率はよくありません。
外付け式フードは吸い込み気流の向きによって下方吸引型、側方吸引型、上方吸引型に分類されます。
発生源から20cm以内にフードが設置できる小型の局所排気装置に適しています。
(参考)
・職場のあんぜんサイト(厚生労働省)『換気(局所排気装置、プッシュプル型排気装置、全体換気)』
1.局所排気装置の届出について
2.労働基準監督署への申請に必要な書類
3.局所排気装置ダクト工事のよくある質問
4.局所排気装置ダクト工事施工の流れ
5.労働基準局申請について
6.有機溶剤 関連記事
7.局所排気装置 関連記事
8.局所排気装置 施工事例
1.局所排気装置の届出について
有機溶剤(※1)や粉じんなど労働者の人体に有害の恐れのある物質を取り扱う場合、労働安全衛生法88条の規定に基づき、工事開始の30日前までに設置に必要な図面と局所排気装置摘要書を添付して労働基準監督署長の届け出をし、計画の内容について審査を受けなければなりません。
法的には局所排気装置摘要書を提出せずに設置された局排設備は局所排気とは認められません。
第八十八条 事業者は、機械等で、危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、厚生労働省令で定めるものを設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の三十日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に届け出なければならない。ただし、第二十八条の二第一項に規定する措置その他の厚生労働省令で定める措置を講じているものとして、厚生労働省令で定めるところにより労働基準監督署長が認定した事業者については、この限りでない。
※1有機溶剤について
有機溶剤中毒予防規則が定められている有機溶剤(労働安全衛生法施行令 別表第六の二に掲げる有機溶剤)は54種類あり、詳細は下記の通りである。
第1種有機溶剤 | |
---|---|
クロロホルム 四塩化炭素 1,2-ジクロルエタン(二塩化エチレン) 1,2-ジクロルエチレン(二塩化アセチレン) | 1,1,2,2-テトラクロルエタン(四塩化アセチレン) トリクロロエチレン 二硫化炭素 |
第2種有機溶剤 | |
アセトン イソブチルアルコール イソプロピルアルコール(2-プロパノール) イソペンチルアルコール(イソアミルアルコール) エチルエーテル エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ) エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(ブチルセロソルブ) エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル(ブチルセロソルブ) エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ) オルト-ジクロルベンゼン キシレン クレゾール クロルベンゼン 酢酸イソブチル 酢酸イソプロピル 酢酸イソペンチル(酢酸イソミアル) 酢酸エチル 酢酸ノルマル-ブチル 酢酸ノルマル-プロピル | 酢酸ノルマル-ペンチル(酢酸ノルマル-アミル) 酢酸メチル シクロヘキサノール シクロヘキサノン 1,4-ジオキサン ジクロルメタン(二塩化メチレン) N,N-ジメチルホルムアミド スチレン テトラクロルエチレン(パークロルエチレン) テトラヒドロフラン 1,1,1-トリクロルエタン トルエン ノルマルヘキサン 1-ブタノール 2-ブタノール メタノール メチルイソブチルケトン メチルエチルケトン メチルシクロヘキサノール メチルシクロヘキサノン メチル-ノルマル-ブチルケトン |
第3種有機溶剤 | |
ガソリン コールタールナフサ 石油エーテル 石油ナフサ | 石油ベンジン テレビン油 ミネラルスピリット |
2.労働基準監督署への申請に必要な書類
1.局所排気装置摘要書
2.圧力損失計算書
3.局排図面
4.排気用送風機の図面
5.有機溶剤を使う生産設備の図面 (機器納入図面、任意です)
6.作業場所の図面 (建築平面図におおよその位置を記入してください)
7.敷地内の工場配置図 (申請場所の位置がわかる図面です)
8.工場周辺の案内図 (周囲の状況がわかる図面です)
1~4までの図面は私ども田崎設備が準備します。
5~8の図面はお客様の方でご用意いただき、すべての図面を提出用2部用意して労基署に申請してください。
その際、写真を用意して説明するとよりわかりやすく伝わります。
3.局所排気装置ダクト工事のよくある質問
局所排気装置ダクト工事の施工エリアはありますか。
現在のところ栃木県・茨城県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・福島県・宮城県・静岡県・山梨県・長野県です。
その都度ご相談承ります。
局所排気装置のコンサルティングと設計だけをお願いすることはできますか。
原則として、局所排気装置には専門的な施工方法が必要なため弊社が一貫して設計から施工までを責任をもってやらせていていただいております。
局所排気装置の施工実績の業種を教えてください。
食品製造工場、印刷工場、化学薬品工場、樹脂製造工場、塗装工場などで、有機溶剤を扱っており粉塵が発生するような工場です。
お支払い方法はどうなりますか。
局所排気装置ダクト工事のお見積もりを提出し、ご納得いただいた場合注文書をいただきます。
その際に着手金として見積もり金額の20%をお支払いいただきます。
局所排気装置ダクト工事完了後、ご請求書を発行し1ヶ月以内に残金をお支払いいただきます。
労働基準監督署への申請もお願いできますか。
労働基準監督署への申請書類は私達が作成いたしますが、最寄りの労働基準監督署への申請は原則としてお客様にてお願い致します。
労働基準監督署への同行申請も別途有料にて承っております。
有機溶剤・粉塵のすべてに対応可能ですか。
製造工程や粉塵の種類によっては対応できない場合もございますのでお問い合わせの際に詳細をお聞かせください。
日本全国どこでも対応可能ですか。
原則として栃木・茨城・埼玉・群馬・千葉・東京・神奈川・福島にて対応しております。他の地域に関しましてはお問い合わせの際にご相談ください。
仮契約後のキャンセルはどのような費用が発生しますか。
打ち合わせ1回目からの交通費、打ち合わせ費、概算見積もり作成費、基本プラン及び実施設計費をお支払いいただきます。
施工後のアフターサービスや点検はどうなりますか。
施工引き渡し後1年間の保証を致します。
1年後の法定点検は有料にて承ります。
4.局所排気装置ダクト工事施工の流れ
- お打ち合わせ・現場調査
- 基本設計
- 積算・見積提出
- お打ち合わせ
- 再見積提出
- ご契約又は注文書発行
- 本設計
- 所管労働基準監督署に同行・設計図提出
- 施工
- 試運転・性能検査
- 完成引き渡し
お問い合わせ
電話またはメールにてお問い合わせください。
事前に以下の情報をご用意いただけるとスムーズに進みます。
①取り扱う有機溶剤・特定化学物質の名称またはSDS(安全データシート)
②有機溶剤・特化物を取り扱う目的
③局所排気装置を検討することになったいきさつ
④局所排気装置が必要な製造工程の種類
⑤作業スタイル(着座又は直立)
⑥同時に作業する人員数
⑦局所排気装置の設置場所がわかる平面図、立面図、配置図
⑧室内の空調条件
夏の室温・相対湿度・外気温
冬の室温・相対湿度・外気温
ヒアリング
まずはじめに御社名・所在地・担当者名をお伺いいたします。
・有機溶剤または粉塵を廃棄したいのか
・既に局所排気装置が設置されているか
・有機溶剤を使う工程や粉塵が発生する工程
・室内の空調管理状況
・労働基準監督署からの指導の有無
・製造工程
・建屋の図面の有無 等
を確認させていただきます。
現場調査、お打ち合わせ(1回目)
局所排気装置の方法、設置場所の確認、工程の確認、現場の状況確認し施工条件を確認します。最後にお支払いの条件をお伺いいたします。
概算見積もりと基本プラン
現場調査後10日から2週間後に概算見積もりと基本プランをご提出いたします。
契約成立
概算見積もりと基本プランの内容に同意をいただき発注書(仮)に押印いただきます。
※発注後キャンセルされる場合にはキャンセル費用がかかります。
(打ち合わせ1回目からの交通費、打ち合わせ費、概算見積もり作成費、基本プラン及び実施設計費)
実施設計・お打ち合わせ、実施設計のお打ち合わせは1回から3回ほど行います。
再見積もりを行い、図面作成、本契約となります。
労働基準監督署への書類作成、申請、工程確認を行います。
施工に入り、工事完了、試運転、排気データの提出後にお支払いいただきます。
5.労働基準局申請について
有機溶剤や粉塵などが発生する工場では労働者の健康被害が社会問題になっております。
企業は労働者の労働環境を守る必要があり、有機溶剤や粉塵を扱う企業では特に有毒ガスや粉塵を労働者が吸い込むことで健康を害し、死亡につながる恐れがあります。
局所排気設備を工場に設置することで有毒ガスや粉塵を労働者が吸い込むことを防げます。
また、労働基準監督署へ局所排気設備申請をすることで企業がきちんと局所排気装置を設置して労働環境を整備していることを第三者に認めてもらうことができます。
万が一の事故の際にもきちんと責任の所在を明確にできるため、企業にとっても危機管理の上でも申請が重要です。
6.有機溶剤関連記事
以下の記事もご参照ください。
有機溶剤の種類
有機溶剤の中毒予防規則について1
有機溶剤の中毒予防規則について2
有機溶剤に関する計画の届出
有機溶剤の危険性
有機溶剤の保管
有機溶剤作業ための保護具
有機溶剤作業主任者
特定化学物質障害予防規則(特化則)について
危険物として取り扱う有機溶剤について
有機溶剤と特定化学物質(特化物)の違い
7.局所排気装置関連記事
以下の記事もご参照ください。
局所排気装置の種類
局所排気装置届出
局所排気装置法令
局所排気装置等定期自主検査者講習
空気清浄装置
局所排気装置の保守管理
局所排気装置制御風速
プッシュプル型換気装置
プッシュプル型換気装置の定期点検指針
局所排気装置自主点検