加工業のお客様より、以下のご依頼がありました。
・フィルムを加工している工場内の気温が40℃を超えている。作業員の熱中症が心配なので対策をしたい。
・有機溶剤を吹付した後の乾燥工程で乾燥炉を使用しており、その乾燥炉自体が発熱している。(表面温度約60℃)
・乾燥炉は工場内の天井付近に設置されていて、その下にフィルムの巻き取り工程の作業スペースがある。
 天井部分が乾燥炉の床にあたるため特に放熱がひどく、スポットエアコンを4台設置しているが風が当たる部分しか涼しくない。
 工場全体を涼しくすることはできないか。

<施工前 イメージ図>



<施工後 イメージ図>


このご依頼に対して、田崎設備では全体空調の導入をご提案いたしました。

今回の機器選定を行う際に負荷計算を行い、機器を選定しました。
工場内の広さが50㎡に対して、在室人数や室内温度、常にカーテンを閉めている状態での窓ガラスの熱負荷などを考慮し、負荷計算を行いました。
乾燥機の底部から発する熱量を独自計算し、負荷計算に追加した上で機器選定を行いました。

また、作業スペースの出入り口は元々カーテンが設置されていましたが、空調の効果を高めるためにスライド式の断熱扉をご提案いたしました。

併せて製品の品質管理の観点から「廊下の空気を作業スペース内に入れたくない」とのご要望がありました。
作業スペース内が陰圧(周囲よりも気圧が低い状態)になると、ホコリや細かなゴミが混ざった廊下の空気が入り込んで品質に影響が出る可能性があります。
そこで室内が陽圧(周囲よりも気圧が高い状態)になるように、通常であればてんつり型を選定するところをてんうめ型を採用し、取り込んだ外気に空調処理を行って作業スペース内に排気することで外よりも気圧が高い状態になるようにしました。
その結果、室内をやや陽圧にすることができました。

※てんうめ型はダクトを接続することが前提の機種です。ダクト内を空気が流れる際に発生する圧力(静圧)に対して能力に余裕を持たせているため、フィルターやダクトを接続しても風量を落とさずに使用することができます。

施工風景写真

<施工前>




<施工後>




カーテンが若干膨らんでいるのは作業スペース内が陽圧になっているためです。

<作業スペース内>


作業スペース内の天井(乾燥炉の床面)











施工時に気を使った点、工夫した点

今回の施工で右側の作業スペースにはてんうめツインの4馬力を選定し、設置しました。
前述したように作業スペース内を陽圧にするために選定したものですが、右側の作業スペースは設置できる場所が非常に狭く限られていたため、求める能力とサイズを考慮し2馬力が2台になるようにしました。

施工後のお客様の声

お客様からは、『設置していただいた空調のおかげで作業環境が劇的に改善しました。現場でも好評で、熱中症の心配をせずに働くことができて大変助かっています。
今後は工場内の他のエリアの空調も考えておりますので、またご相談させてください。本当にありがとうございました。』
とのお言葉をいただきました。


設計に対する考え方

設計に込めた私たちの思い

工場の空調や換気のお悩みは本当に多種多様です。
「夏場の暑さで作業が大変」「製品の品質に影響が出る」「においや粉じんを何とかしたい」…。
そうした声を聞き、田崎設備には日々たくさんのご相談が寄せられます。

私たちが設計をするうえで大切にしているのは、次の2点です。
①お客様にとって一番良い方法を考えること
②現場の状況やご要望をしっかり伺ったうえでご提案すること


ご要望を「そのまま形にしない」理由

私たちはいただいたご要望を、単にそのまま設計に落とし込むことはしません。
たとえば「工場内を25℃にしたい」というご依頼があったとします。
普通に考えると「すぐに25℃にできる機械でないといけない」と思ってしまいがちですが、実際に詳しくお話を伺うと「必ずしも即時に25℃でなくてもよい」「作業内容に応じてある程度幅があっても問題ない」ことが分かる場合もあります。

このように背景をしっかり伺うことで必要以上に高価な機械や過剰設備を導入することなく、無理のない方法をご提案できます。
お客様に余計なご負担をかけないことも私たちの大切な設計の役割だと考えています。


一緒に考える設計

設計というと「専門家が一方的に決めるもの」というイメージがあるかもしれません。
ですが、田崎設備の設計は違います。お客様と何度もお話をしながら「なぜその条件が必要なのか」「どうすればもっと快適に、安全に作業ができるのか」を一緒に考えます。
だからこそ出来上がった設計は「ただの設計」ではなく、お客様の工場に合ったオーダーメイドの解決策になるのです。


結び

私たちの仕事は、ただ機械を設置することではありません。
お客様のお悩みを一緒に考え、最適な形をつくり出すこと。それが、田崎設備の設計に込めた思いです。