栃木県佐野市にある日本酒製造業のお客様より、以下のご相談がありました。

・日本酒製造の作業工程の中に搾り工程があり、伝統的な木造の古い建物にある搾り機で作業を行っているがカビが発生しやすく困っている。
 搾り機の周りに天井や壁などを作り、搾り工程の部屋として区分けして温湿度管理することはできないか。

・その場合、搾り機のメンテナンスや搬出搬入時の作業性確保のため大きな開口扉を設けてほしい。

田崎設備からのご提案

搾り工程を空調管理するためには部屋として区画し、結露しないように断熱する必要があります。
既存の工場が築80年を超える木造の建物であり、断熱構造になっていないため設計条件(10℃~13℃)に合わせて天井および外壁面の結露防止に配慮して以下のご提案をさせていただきました。

・搾り機のメンテナンスや製品の出し入れを妨げないよう、動線の壁は可動式ビニールカーテンを採用しました。

・お客様との打ち合わせで室温の管理以上にカビ・結露対策が重要だと判明し、また搾り機の稼働時期が限定的(1月~5月)のため、冷却機能付き床置き型除湿器を採用しました。

・除湿器の吹出口をダクトにて振り分け、圧損により風量が減少しないようにダクト間に補助ファン(斜流ファン)を設けました。

風量バランスを取るため吹出口(全4カ所)全てに風量調整ダンパーを設置するとともに、吹出口にリバーシブルターボノズルを採用し吹き出し空気の到達距離に配慮した選定を行いました。

リバーシブルターボノズルとは

ノズル型吹出口の一種で、一般に劇場やホール、体育館などの天井面やロビーの壁面に取り付けられるものです。
中央のノズルを回転させることで「拡散」と「ストレート」2種類のエアパターン切り替えが可能です。

リバーシブルターボノズルは取り付け方によって風の拡散と集中が選択できる優れもので、現場に合わせて取り付け方法が選べるため今回採用しました。



施工風景写真













施工時に気を使った点、工夫した点

今回の搾り工程ブースが細長く、また空調機を置くスペースに制約があるため、まずはお客様と現場にて作業手順や動線を念入りに確認するところから始めました。
またご希望の温湿度状態を作るために天井間仕切り工事が不可欠であることをご理解いただいたうえで設計積算に取り掛かりました。



除湿と共に強力に冷却する「冷却機能付き床置き型除湿器」を選定しましたが、長細い部屋で設置場所が限定されたためダクトを取り付け中央付近から左右に吹き出す空調方式にしました。
ダクトやノズルを取り付けることによる圧力損失(ダクト内抵抗)の影響により風量不足が発生する事は予測できていたので、ダクトの途中に補助ファンを設置し風量不足の解消を図りました。
また到達距離が左右で違うことから今回初採用の「リバーシブルターボノズル」により適正な到達距離を実現することができました。



搾り工程では酵母菌が浮遊するため、天井や壁に付着してカビや菌の温床となる可能性があります。
そのため天井仕上げ材にはバスリブパネルを、壁材には外壁で使用するサイディング材を採用し、通常のオペレーションで水洗いや拭き取りが容易にできる素材を選択し仕上げました。
照明はLED照明器具を採用し、作業エリアに影ができないよう配慮しました。





施工後のお客様の声

お客様からは『搾り工程に関しては今まで温度管理しかしていなかったが、今回は冷却機能付除湿器を導入して湿度も管理できるようになり、安心して製造できるようになりました。これは、とても良い!』とのお言葉をいただきました。