「許容濃度」と「管理濃度」は、どちらも職場における有害物質(化学物質や粉じんなど)から労働者の健康を守るための指標ですが、その目的や基準を定めている機関は異なります。
1.許容濃度(Permissible Exposure Limit)
「この濃度以下なら毎日8時間、週40時間働いても大半の労働者に健康被害が出ない」とされる基準です。
主体の機関:日本産業衛生学会や、米国のACGIH(米国政府産業衛生専門家会議)など
考え方のベース:科学的・医学的な知見のみに基づいて決められており、技術的・経済的な達成のしやすさは考慮されていません。
特徴:あくまで「個人」が吸い込む量に着目しているため、防毒マスクなどの呼吸用保護具を正しく着用した内側の濃度で評価することも可能です。
2.管理濃度(Administrative Control Level)
「有害物質を取り扱う作業場(空間)が適切に管理されているか」を判定するための基準です。
主体の機関:厚生労働省(労働安全衛生法に基づく)
考え方のベース:許容濃度を参考にしつつ、現在の測定技術や排気装置の性能など「現実的に達成可能か」という実効性も考慮して国が定めています。
特徴:「空間」を評価するため、作業環境測定(A測定・B測定)というルールに則って測定します。マスクの効果は加味せず、その空間自体の空気の汚染度を測ります。
例えで理解する「許容」と「管理」
・許容濃度は「個人の防衛ライン」
プールで例えるなら「水中にいる人が吸う空気(あるいは水)がどれだけ安全か」です。
もし外の空気が汚れていても、高性能なシュノーケル(マスク)で綺麗な空気を吸えていれば許容濃度以下に抑えられていることになります。
・管理濃度は「部屋のルール」
プールで例えるなら「プール全体の水質基準」です。
泳いでいる人がゴーグルをつけているかどうかに関係なく、プール自体の水が綺麗でなければ一発アウト(第3管理区分)になります。
●管理濃度による「作業環境評価」の3区分
測定された濃度をもとに作業場は以下の3つに区分され、それぞれ必要な対策が義務付けられます。
・第1管理区分(良好):気中濃度が管理濃度より大幅に低い状態。現在の管理を維持します。
・第2管理区分(可):管理濃度付近。換気装置の点検や作業方法の見直しなどの「努力」が必要です。
・第3管理区分(不良):管理濃度を超えている状態。直ちに換気設備の改善、労働者への有効な保護具(マスク等)の着用、再測定などが義務付けられます。
その他の関連指標:濃度基準値
近年では、これらに加えて国が定めた「濃度基準値」というものも運用されています。
一言でいうと「国が法律で定めた、労働者個人が吸い込んでもいい有害物質の“絶対的な上限値”」です。
これは個人のばく露状況を評価するための法的な基準値であり、対象物質を取り扱う事業者は、労働者のばく露(吸い込む量)をこの基準値以下に抑えることが完全に義務化されています。
3つの「濃度」の違い
ここでは混乱しやすい3つの濃度について整理します。
・管理濃度:【空間の基準】(義務)…「作業場全体」の空気が綺麗かどうかを測る。
・許容濃度:【個人の目安】(推奨)…学会などが定めた「これくらいなら安全」という医学的な目安(法的な強制力はなし)
・濃度基準値:【個人の上限】(義務)…国が法律で定めた「労働者が実際に吸い込む空気の限界値」
マスクに頼る前に、まずは「設備による対策」が必要です
万が一、リスクアセスメントや測定で「濃度基準値を超えている(超えるおそれがある)」と判明した場合、事業者は対策を講じる必要があります。
国のガイドラインでは、対策の優先順位が以下のように定められています。
1 本質的対策:有害性の低い物質への代替
2 工学的対策(★当社の専門分野):局所排気装置の設置、密閉化、全体換気
3 管理的対策:作業時間の短縮、マニュアル化
4 個人用保護具:防毒マスク、防じんマスクの着用
防毒マスクなどの保護具は「最終手段」であり、まずは「工学的対策(換気設備の導入・改善)」を検討することが最優先とされています。
当社ではお客様の工場の状況に合わせ、濃度基準値を確実にクリアするための最適な局所排気・換気設備をご提案いたします。
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