有機溶剤は産業活動に重宝な材料で不可欠である半面、人体に有害なガスや蒸気を発生させるものが多く、業務従事者の呼吸器と肌、身体の安全を守る保護具の備えが重要になっています。
(参考:有機溶剤中毒予防規則 第七章 保護具(第三十二条-第三十四条))
有毒ガスを吸い込むことによる中毒や健康障害を防ぐために、有機ガス用防毒マスクや送気マスクなどがあります。
防毒マスクはろ過式で有毒なガスを吸収缶で除去する方法です。
吸収缶はマスクの先端に付けられるもので用途によって色などで指示されています。
作業内容により、適宜な交換を心がける必要があります。
送気マスクは給気式の一つで新鮮な空気を機械的にホースで送り込む場合と空気ボンベなどを背負って呼吸に利用する自給式があります。
保護具を利用した際に有害物質からどのくらい防護できるかの目安として防護係数があります。
マスク内外の有害物質の濃度差を示したものです。
マスクの使い分けは作業現場によります。
酸素濃度が18%以下や不明の場合は防毒マスクは使えず、送気マスクか自給式で万全を期します。
なお、有機ガス用の防毒マスクは厚労省告示による国家検定が義務付けられています。
マスクの選定は有機溶剤作業主任者が中心となって現場に合った方式、種類を判断、作業者の顔に密着しているかなどから判断します。
送気マスクは空気圧縮機などから送り込みますが、作業者までの中間に活性炭を使ったろ過装置を使用しており発火や交換に気を配る必要があります。
事故防止のためにも定期的な点検が必要となります。
体への有害物質の付着を防ぐのが化学防護衣類などです。防護服のほかにめがね、手袋、長靴なども含まれます。
有毒ガスや蒸気が付きにくい材質であることが基本です。
JIS規格で透過試験により化学物質に対する性能評価がされており、JIS規格に適合した物を使用することになっています。
使用に際しては、手袋などは新品でもキズなどがないかなどを確認する必要があります。
防護服は皮膚を保護するため、通気性がないために体温が上昇することもあり、夏季などの長時間作業には休憩などの配慮が欠かせません。
使用後も化学物質を完全に除去し次に備えるために、良好な環境での保管が必要です。