令和6(2024)年4月より、リスクアセスメント対象物質(化学物質)を取り扱う現場において、「保護具着用管理責任者」の選任が義務化されています。
この制度は労働者が防じんマスクや保護手袋などの保護具を正しく使用し、化学物質による健康障害を防ぐための「管理・指導の責任者」を明確にすることを目的としています。

1.保護具着用管理責任者の主な役割

選任された責任者は、主に以下の業務を担います。
・適切な保護具の選定
 作業内容や化学物質のリスクに応じ、適切な有効性を持つマスクや手袋を選定します。

・保護具の保守管理
 フィルターの交換基準の策定や、使用後の清掃・保管状態のチェックを行います。

・労働者への指導、教育
 正しい着用方法の徹底や、顔への密着性を確認する「フィットテスト」の実施・管理を行います。

2.選任が必要なケース

化学物質のリスクアセスメントの結果、労働者に以下の保護具を使用させる事業場では作業場ごとに選任が必須となります。

・呼吸用保護具(防じんマスク、防毒マスク、送気マスクなど)
・皮膚保護具(化学防護手袋、保護衣、保護メガネなど)

3.選任用件と期限

責任者には、保護具に関する知識と経験を持つ者を選任する必要があります。

・選任要件
 以下の資格者など「保護具に関する知識・経験を有する者」から選定します。
 ・安全管理者、衛生管理者
 ・化学物質管理者
 ・作業主任者(特定化学物質、有機溶剤等)

・講習の受講について
 上記に該当する者がいない場合は、「保護具着用管理責任者教育(1日)」の受講が義務付けられています。
また、資格を有している場合でも最新の知識習得のために受講することが強く推奨されています。

・選任期限
選任の必要が生じた日から14日以内に選任しなければなりません。

4.2024年4月からの義務化と周知

労働安全衛生規則の改正により、単に保護具を配布するだけでなく「誰が責任を持って管理するのか」を明確にすることが義務となりました。

周知の方法:
選任後は、事業場の見やすい箇所(休憩室や作業現場の掲示板など)に氏名を掲示し、全従業員に周知する必要があります。

5.有機溶剤作業主任者と保護具着用管理責任者の関係性

有機溶剤を取り扱う現場では、従来から「有機溶剤作業主任者」の選任が義務付けられていますが、2024年4月からの改正により「保護具着用管理責任者」も義務化されました。

有機溶剤作業主任者と保護具着用管理責任者はどちらも化学物質から労働者を守る重要な役割ですが、その焦点が異なります。
前者は主に『中毒を防ぐための現場環境』を管理し、後者は『防具が正しく機能し、正しく着用されているか』を専門に管理します。

ここでは混同されがちなポイントについて解説いたします。

役割の違い

比較項目有機溶剤作業主任者保護具着用管理責任者
主な目的有機溶剤による中毒の防止保護具の適正な選択・使用・管理          
主な業務換気設備の点検、作業方法の監視、保護具の使用状況の確認保護具の選定、保守点検(交換時期管理)、フィットテストの実施
選任の根拠有機溶剤中毒予防規則(特化則など)労働安全衛生規則(リスクアセスメントに基づく)
資格要件有機溶剤作業主任者技能講習の修了知識・経験を有する者(作業主任者も含む)

兼務について

保護具着用管理責任者は、知識や経験があれば作業主任者や化学物質管理者が兼任することも可能です。
むしろ現場の有害業務を熟知している「有機溶剤作業主任者」が「保護具着用管理責任者」を兼務することは、実務上非常に合理的であるともいえます。

作業主任者がいる場合でも選任が必要

有機溶剤を取り扱う現場では『作業主任者』の選任が従来より義務付けられていますが、リスクアセスメントの結果、防じん・防毒マスク等の使用が必要と判断された場合には新たに『保護具着用管理責任者』も併せて選任しなければなりません。

教育の免除について

有機溶剤作業主任者の技能講習を修了している人は「保護具に関する知識及び経験を有すると認められる者」に該当するため、保護具着用管理責任者教育(1日講習)を受講しなくても選任が可能です。
ただし、最新の防護技術やフィットテストに関する知識を補完するため受講することが望ましいとされています。


有機溶剤作業主任者が『現場の環境』を整え、保護具着用管理責任者が『個人の身を守る用具』を管理する。
この両輪が機能することで初めて化学物質のリスクから労働者の健康を守ることが可能になります。

(参考)

厚生労働省 職場のあんぜんサイト『保護具着用管理責任者』
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo88_1.html