日本酒醸造業を営むお客様より、土間の改修及び冷凍倉庫を設置したいというご依頼がありました。
冷凍機設備は倉庫の一角に新たに設置するため、まず土間の改修工事を行いそこに冷凍機設備を設置することとなりました。
■土間の改修工事について
今回は以下の流れで施工を行いました。
1.墨だし・コンクリートカッター工事
2.掘削
3.砕石敷き込み
4.防湿シート1層目敷き込み工事
5.捨てコンクリート打設
6.鉄骨建て方工事
7.パネル建て方
8.防湿シート2層目敷き込み工事
9.スタイロフォーム敷き込み
10.防湿シート3層目敷き込み工事
11.鉄筋工事、土間コンクリート打設
12.ガードアングル取付工事
13.冷凍設備工事
1.墨だし・コンクリートカッター工事
まず冷凍倉庫を設置予定の箇所のコンクリートを切り出します。
設置予定箇所
墨だし風景
2.掘削
重機を使って切り出したコンクリートを剥がし、掘削していきます。
掘削風景
3.砕石敷き込み
砕石の敷き込みは地盤の安定化のために行います。
転圧することによりレベル調整をすることができ、上に重ねて敷くコンクリートの厚さを一定化することができます。
※転圧とは土砂やアスファルト等に力を加えて空気を押し出し、粒子同士の接触を密にして密度を高めることです。
砕石敷き込み風景
転圧風景
4.防湿シート1層目敷き込み工事
防湿シート1層目の役割は地面から上がってくる湿気を防ぐことです。
今回は地面との段差部分もしっかりとシートを敷き込み、防湿効果が上がるよう工夫しました。
防湿シート1層目敷き込み風景
5.捨てコンクリート打設
気温が低いとコンクリートに含まれる水分が蒸発せず固まらないため、最初に出てくる水分を多く含んだコンクリートはバケツに移すなどして全体の水分が少なくなるよう調整しました。
コンクリート打設風景
6.鉄骨建て方工事
今回設置する冷凍倉庫に使用するパネルは一定の高さを超えると自立が難しいため、元々ある鉄骨に上下2段の補強を行うことで対応しました。
上段はパネルの転倒防止、下段は荷運びの際に誤って激突しパネルを破損させないよう設置しました。
貫通ボルトで鉄骨に打ち込み、ボルト自体も熱が伝わらない樹脂製のものを使用しました。
工事風景
7.パネル建て方
設置する冷凍倉庫の温度帯は-10℃のため、使用範囲が-25℃~+60℃、厚さ80mmのフラットパネルを使用しました。
作業風景
8.防湿シート2層目敷き込み工事
防湿シート2層目の役割は1層目と同様、地下から上がってくる湿気の防止です。
作業風景
9.スタイロフォーム敷き込み
スタイロフォーム(発砲プラスチック系断熱材)は断熱効果を高めるために2層にし、できるだけ目地が被らないよう段違いにするなど並べる向きを変えて敷き込みました。
作業風景
10.防湿シート3層目敷き込み工事
防湿シート3層目の役割は仕上げ土間コンクリート内の水分を下のスタイロフォームに浸透させないために敷設しました。
作業風景
11.鉄筋工事、土間コンクリート打設
鉄筋を敷き、コンクリートの打設を行いました。柱回りもひとつひとつ丁寧にコテで仕上げました。
鉄筋工事 作業風景
コンクリート打設 作業風景
12.ガードアングル取付工事
お客様によると冷凍倉庫を使用する時期と使用しない時期があるということで、未使用時期に水が溜まってしまうのを防ぐため熱が伝わりにくい工夫をする必要がありました。
また、フォークリフトで荷物を移動させる際にパネルに激突して破損させてしまわないようにガードアングルを付けてほしいとご要望がありました。
お客様の取り扱う商品が日本酒であるため、パレットの並べ方に合わせて施工を調整しました。
パネルの表面もアングルも鉄でできているため熱が伝わってしまう可能性があり、倉庫外側のパネルと固定具との間に3mmの薄い塩ビの板を挟み込むことで鉄同士が触れないような施工を行い断熱効果が高まるよう工夫しました。
作業風景
工夫箇所(施工前後と拡大図)
フォークリフトで荷物を移動させる際、万が一パネルに激突してしまっても破損しないよう補強のために胴縁施工を行いました。
施工後
施工後拡大図
パネルと固定具の間に3mmの薄い塩ビの板を挟み、断熱効果を高める施工を行いました。
(写真は塩ビの板を挟む前の状態です)
13.冷凍設備工事
完成した冷凍倉庫はこのようになりました。
工夫した点は以下のとおりです。
①ドレン管に銅管を採用
②クーラーの配置を工夫
③フロアヒーターの回路にスイッチを設置
①ドレン管に銅管を採用
今回冷凍機のドレン管に銅管を採用しました。
その理由は塩ビよりも熱伝導率に優れ、熱による変形がなく、錆びにくいからです。
設置したドレン管
②クーラーの配置を工夫
倉庫内に設置したクーラーは2台です。土間の中央に吊り下げる形で両方の壁に向けて送風するよう配置しました。
エアコンはファンが見えている方が正面、奥の黒くなっている部分が吸込口です。
扉からまっすぐ突き当りまでを通路にして両脇にパレットを並べる予定のため、風を両脇から回して中央から吸い込む構造をご提案しました。
この設置方法であれば万が一漏水したとしてもエアコンの真下が通路のため商品をどけることなく修理ができます。
また、配管貫通部やボルト類の断熱処理をしっかりと行い、凍結や結露対策を行いました。
なお施工時の計測では-25℃で500mm結露なしという結果になりました。
設置後の様子
天井上の様子
③フロアヒーターの回路にスイッチを設置
常時冷凍運転を行わない可能性があることから、電動扉、フロアヒーターの回路にスイッチを設け、ドアパッキンの凍結防止や冷凍庫内温度の上昇が抑えられるように配慮しました。
今回は土間及びドレン工事について特に重点的に施工を行い、断熱効果が高くなるよう各所に工夫を凝らし工事を行いました。
また、今後もし水漏れ等の問題が起こったとしてもパレット移動の手間なく修理・修繕が行いやすいようユニットクーラーの設置を工夫し、扉のパッキンや銅管が凍結しないように施工しました。