製造業のお客様より、以下のご相談がありました。
・2021年4月1日から溶接ヒュームが特定化学物質認定されるため、現在溶接作業を行っている作業場に溶接ヒュームの排気に対応した局所排気装置を設置したい。
フランジと鉄管を溶接する工程があり半自動で作業が行われていましたが、そこで溶接ヒュームが発生している状態でした。
今まで溶接ヒュームは有害物質として認定されていなかったため排気設備は設置されておらず、周囲には溶接作業時に発生する風を避けるためにブースが組まれていました。
溶接ヒュームは2021年4月1日から特定化学物質に認定されました。
これにより作業場の溶接ヒュームに関係する物質の抑制濃度を0.05mg/㎥以下にすることが必要となります。
全体換気装置や局所排気装置を設置して濃度を抑制することが定められています。
また、溶接ヒュームを多量に吸い続けると「じん肺」等の健康障害を発症するおそれがあるため、作業者のためにも溶接ヒュームを排気する必要があります。
溶接ヒュームとは
溶接ヒュームとは、アーク溶接の際に白い煙のように見える小さな金属の粒子のことです。
金属をアーク溶接する際にアークから発生する熱で溶けた金属が蒸気となり空気中で急激に冷やされて酸化し、金属のとても小さな粒子に変化したものを指します。
今般この溶接ヒュームが神経障害等の健康障害を及ぼすおそれがあることが明らかになり、労働安全衛生法施行令、特定化学物質障害予防規則(特化則)等が2021年4月1日に改正されました。
詳細については以下のホームページ、パンフレットをご参照ください。
・厚生労働省ホームページ
『令和2年4月の特定化学物質障害予防規則・作業環境測定基準等の改正(塩基性酸化マンガンおよび溶接ヒュームに係る規制の追加)』より
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000099121_00001.html)
・『金属アーク溶接等作業を継続して屋内作業場で行う皆さまへ』(PDF)
(https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000746531.pdf)
・『屋外作業場等において金属アーク溶接等作業を行う皆さまへ』(PDF)
(https://www.mhlw.go.jp/content/11305000/000654446.pdf)
課題解決のご提案
溶接ヒュームの排気を行う際には下記のような注意点があります。
①火を取り扱うため、集塵装置内に火種が入り込む可能性がある
②溶接作業時、溶接部に外流(風)が当たると溶接不良を起こす可能性がある
③溶接ヒュームは発生時は気体(煙)だが、空気中で冷却されると固体(粉じん)となるため、気体の状態で排気を行う必要がある
そこで、今回は次のような点に配慮して施工を行いました。
①集塵機は火災対策機能付きの集塵機を選定し、火種を集塵機が吸い込んだ際に延焼などのリスクを抑えられるようにした
②集塵機の吸込み口が溶接部に近すぎると溶接不良を起こす可能性があるため、実際に溶接を行いながら吸込み口の高さを調節した。
③溶接不良を起こさせず、かつ溶接ヒュームが吸い込み口の外に出てしまわないように計算し設計を行った。
施工風景写真
<吸込み口の風速>
<吸込み口から100mm離した位置での風速>
<吸込み口から200mm離した位置での風速>
<吸込み口から300mm離した位置での風速>
<吸込み口から400mm離した位置での風速>
<吸込み口から500mm離した位置での風速>
<溶接部付近での風速>
<溶接中の吸込み風景>
<溶接中の吸込み風景 動画>
施工前・施工後のデータ
施工前は排気設備が設置されていない状況でした。
施工後は目視で確認できる溶接ヒュームは集塵機によって排気されており、溶接不良を起こさずに作業環境を向上させることができています。
施工時に気を使った点、工夫した点
・吸込み口の高さ調整が必要となるため、吸込み口を固定可能なフレキシブルアームにし、溶接対象物の大きさに合わせて高さを調節できるようにしました。
施工後のお客様の声
お客様からは『溶接ヒュームが新たに特定化学物質に認定されるということで局所排気装置の設置が必要となったが、田崎設備のおかげで作業効率を低下させることなく対策ができました。ありがとうございました。』とのお言葉をいただきました。
溶接ヒュームの排気は溶接箇所や作業者の人数によっては対応策が異なる可能性があり、必ずしも今回の事例で行った対応が最適解という訳ではありません。
お客様の作業環境や作業工程、取り扱う製品や作業人数に合わせて設計・施工を行うことができるのが田崎設備の強みです。
溶接ヒュームでお悩みの方はぜひ一度、田崎設備にご相談ください!