1.お客様の悩み
お客様から以下のご相談がありました。
・ワニス含浸工程にてワニスに製品を浸した後、液切りをしている際に揮発したワニスの蒸気が周囲に拡散し刺激臭がしている。
・局所排気装置を設置してほしいが製品をクレーンで吊って動かしセッティングする都合上、局所排気装置の固定化が出来ない。
製品がぶつからないように移動可能にしてほしい。
2.設計条件
局所排気装置(プッシュプル型)制御風速0.2m/s
3.ご提案・工夫
①プッシュプルフードの構造について
ワニス含浸工程にて製品を浸すため、プッシュプルフードは製品以上の大きさが必要でした。
そこで製品より一回り大きくなる捕捉面を決め、お客様の使い勝手を妨げないか確認した上でプッシュプルフードの開口面積を確定しました。
吹出し側・吸込み側共にW1000×H1800の大きさとなるので、吹き出し風速が均一化されるように様々な工夫を施しました。
ワニス含浸後の製品は吊り上げたまま乾燥させるのですが、均一に乾燥させたいとのご要望があったため風速をできるだけ抑える必要がありました。
風速が遅くなるほど気流のコントロールが難しくなります。乱気流を発生させないためにも吹き出し風速を一定にする技術が求められました。
吹き出し口に様々な改良を加えた結果、制御風速0.22m/s~0.34m/sを確保することができ、製品の乾燥スピードの誤差を最小限に抑えることができました。
②局所排気装置の移動について
局所排気装置は原則として固定して使用する装置のため、「局所排気装置を移動可能にしてほしい」とのご要望で大いに悩むことになりました。
打開できたのはお客様からの『吹き出し側(プッシュ側)のフードをレール上で自由に動かせるようにしてはどうか』という一言がきっかけでした。
検討の結果、接地面の縞鋼板にアングルを3本固定し、その上をプッシュ側フードと送風機が架台ごとキャスターで動く構造にしました。
レール上だけを稼働する構造にしたため吹き出し面と吸込み面の距離や向きが変わらず、性能に影響を及ぼす心配がなくなりました。
製品の移動の際にプッシュ側が逃げることで衝突の危険が少なく、お客様の構想通りの施工が実現できました。
③装置性能について
プッシュ側、プル側共にプレフィルターを取り付けました。
ゴミの吹き出しや吸込みを防ぐとともに風速を均一にするために一役買っています。
また、吹き出し(プッシュ側)、吸込み(プル側)の送風機共にインバータを取り付け風量が可変制御できるようにしました。
4.施工後のお客様の声
お客様からは『現場の刺激臭が減り、職場環境を改善することができました。
またプッシュ側フードと送風機を移動出来る仕様にしたことで作業の邪魔になることがなく、快適な作業環境を維持することができました。
こちらの要望を具体化していただき満足しています。』とのお言葉をいただきました。