製造業のお客様より、以下のご相談がありました。
・新築の建屋に局所排気装置を設置したい。
・製造工程でモーターコイルをワニスに含侵する工程があり、そのワニスに有機溶剤(キシレン)が含まれている。
・法令に沿った局所排気装置の設置と、設置に伴う労働基準監督署への申請をお願いしたい。
実際に現場で作業工程を確認すると、含侵させるモーターコイルをクレーンで含侵槽へと移動させていました。
そのまま30分ほどワニスに浸し、含侵槽の上で固定して液が垂れなくなったら乾燥炉に移動させて乾燥させるという流れでした。
お客様からは局所排気装置を設置した状態でクレーンを使用できる構造にしたいとお話があり、ワニス含侵槽を囲い式フードなどで囲ってしまうとクレーンを使用できなくなってしまうため、今回はプッシュプル型換気装置を選択しワニス含侵槽の上面を開放できる形で設計・施工を行いました。
含侵とは?
含侵とは、素材内部の隙間に液体を浸み込ませる技術のことです。
処理容器(タンク)内に素材を入れ減圧環境下におくことで内部の気泡を抜き去り、そのタンク内に液体を注入して含浸させた後、さらに加圧することで素材内部の隙間に液体を急速に送り込みます。
使用用途としては金属、木材、樹脂の気密性保持や腐食防止、モーターコイルにおいては絶縁層、その他食品や電子部品など様々な含浸処理がされています。
施工内容
・プッシュプル型換気装置の設計、施工
作業工程の都合上、ワニス含侵槽を使用している間は常に局所排気装置を稼働させたいとのご要望がありました。
クレーンでの移動を可能にするためプッシュプル型換気装置を選択しましたが、クレーンの動線がプッシュフードと重なっていました。
そこで、ワニス含侵槽を使用する時以外は移動ができるようにプッシュフードと送風機を車輪付きの架台に乗せ可動式に、移動の必要がないプルフードは床置きの固定式としました。
※掲載している写真や図面にはプライバシー保護および当社の技術的ノウハウの保全のため、一部にモザイク加工を施しております。
あらかじめご了承ください。
<プッシュフード>
<プルフード>
施工風景写真
<施工前>
<施工後>
<プッシュフード>
<プルフード>
風速測定結果
開口面で計測した結果が下記の数値です。
①0.24 ②0.25 ③0.27 ④0.15
⑤0.30 ⑥0.16 ⑦0.15 ⑧0.16
⑨0.25 ⑩0.24 ⑪0.25 ⑫0.17
⑬0.27 ⑭0.16 ⑮0.17 ⑯0.21
施工時に気を使った点、工夫した点
プッシュフードを可動式とした際、送風機の電源を接続しながら移動するため電気配管にマシンフレキというケーブル保護管を選定しました。
マシンフレキは電線やケーブルを収納・保護する可とう管で、塩ビカッター等で容易に切断できるため作業期間の短縮に繋げることができました。
施工後のお客様の声
お客様からは『作業工程を考慮し柔軟に対応していただきありがとうございました。労働基準監督署に提出する書類も作成していただき感謝しています。』とのお言葉をいただきました。